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連携制度

連携支援制度

代々続く農家が抱える課題を解決するワークショップ

平成31年2月25日(月)に、Peace kitchen Tokyo(東京都港区)にて、「代々続く農家が抱える課題を解決するワークショップ」を開催しました。

主催:
有限会社秀吉
開催日時:
平成31年2月25日(月)16:00~18:00
開催場所:
Peace kitchen Tokyo(東京都港区)
参加人数:
18人
開催概要:

有限会社秀吉は、代々にわたり農業を引き継いでいる生産者にとって、これまでの事業を継承しつつ、「何を作れば良いのか」、「何を求められているのか」、「代々作り続けてきた食材に変わる生産物は何なのか」という悩みがあります。この悩みを解決するために秀吉は、継続的に食材を使用する「利用者」、「販売者」である飲食店経営者・シェフ・バイヤーなどと連携し、生産者が抱える課題を共有しました。消費者へ最終的に販売する飲食店経営者やバイヤーなどが求める食材などを共有し、生産・販売拡大に繋がるための方策を考え、実行に繋げるワークショップを開催しました。

まずは、13代にわたり農業に従事する高橋和久氏(株式会社高橋農園)に「13代目の農家としての課題:商品にならない食材の現状」というテーマにて、現在主要生産物である「ジャガイモ」の生産状況や現在の販路先、抱えている課題や悩みについて講演していただきました。キタアカリ、男爵といった一般的な品種を主に全国農業協同組合連合会やスーパーに納めており、サイズの小さなものや規格外といったものはポテトフライにし、冷凍加工品として出荷しているが、この販路や商品だけでは農業経営の継続が厳しいことと、ポテトフライだけが加工品として求められているものなのか、という課題を参加者と共有しました。

【講演:高橋和久氏(高橋農園)】

【講演:安藤誠二氏(耕野)】

次に、花巻市で装飾野菜作りに取り組む安藤誠二氏(株式会社耕野)に「2代目農家のチャレンジと苦悩:廃棄せざるを得ない食材の現状」をテーマに、「米農家」から脱却した背景と、付加価値ある新しい食材に取り組む苦悩・課題について、講演していただきました。両親、地域の米農家の農業事情を知るにつれ、お米だけの農業には限界があると思い、一念発起、市場競争の少ない農産物に取り組み5年前に起業しました。飲食店向けにと、野菜の色味・食味・大きさの特徴を生かした「装飾野菜」に特化し、一年を通して常時20種類以上の商品を生産販売するという目標に取り組むも、販路拡大の難しさと、飲食店側が求めるサイズや食味などのクオリティが追い付かず、起業当初は苦労をされたようです。大型ハウスを取り入れた後は改善もしてきましたが、今度は過剰生産分の行き先の苦慮と、最終的には廃棄される商品が増えているという課題について共有することができました。

【講演:比嘉康洋氏(Peace kitchen TOKYO)】

その後、料理人視点から「これまでの商品&メニュー開発と食材を生かす視点」と題して、比嘉康洋氏(Peace kitchen Tokyo)に講演していただきました。これまでの飲食店経営の経験や、商品開発、メニュー構築をする中で、生産者に求めてきたのは「商品の善し悪し」だけでなく、「情報の早期開示」と「共に取り組む姿勢」が大事である。生産者は自ら考えてしまいがちで、かつ、商品が大きく育ちすぎたり、数が多く出てしまった時に情報を伝えてくる傾向にあるが、生産途中に情報をもらえれば事前に対応策を考え、販路も見つけられるので、もっと声を大にして発信していただきたい。また、生産者は飲食店を販路先として小さく見がちであるが、料理人の中には幅広く外食業界に通じて人もいるので、取組先として繋がっておくことで、新たな顧客創出の機会にもなるのではないかということについてもお話し頂きました。

最後に、参加者が2グループに分かれ、ディスカッションと課題解決のためのアイデアを共有しました。格之進F(東京都港区)のシェフ:及川淳至氏からは「ジャガイモはポテトフライではなく、ピューレの状態にしておくとジャガイモソースで食べるみたいな感覚で料理人は使いやすい。ただし、飲食店の現場でソースを作る手間は人材不足で難しいので、産地側でそこまでできれば大いにニーズはあると思う。産地側の醸造メーカーや加工品メーカーとタイアップしてみたらどうか」というアドバイスを頂きました。

Rizo(東京都世田谷区)のシェフ:盛田智宏氏は「装飾野菜は根をカットされた状態での納品が多く劣化しやすいので、なかなか購入量を増やせずにいる。水耕栽培の利点を生かして根付の状態で出荷すれば、買い手も購入しやすく廃棄ロスも減る」とアドバイスを頂きました。

HY TOKYO(東京都港区)のシェフ:日向啓氏からは「高橋さんが取り組む彩りジャガイモの生産を強化し、外食産業向けに拡大をすることが農業経営に活路を見いだせるのでは」とアドバイスを頂きました。

また、比嘉康洋氏が、ジャガイモとマイクロリーフを使った肉サンドをその場で試作され、「肉との相性が良い食材なので、岩手のブランド牛「短角牛」などとのセットメニューとして飲食店やバイヤーに売りこんではどうか」とコメントされました。

活動した成果:
生産者が抱えている現状を、首都圏で活躍する料理人やバイヤーに直に伝えることができ、また、いろいろな立場からの意見を聞くことができたので、次への可能性を見出す機会になりました。更に産地で抱えている悩みは、産地だけでは解決できず、東京をはじめとした消費地での使われ方、使い方を学びながら進めなければいけないということを強く感じました、と両生産者が口をそろえて話されていました。一方参加した飲食店関係の方からは、生産者の苦労や悩みを聞けたことは、「食」に関わる一人として、大変勉強になったとのお声も頂き、双方に実りある時間となったと思います。
復興・創生との関係:

岩手県全体の主幹産業である「農業」は、風評被害は以前より少なくなったとはいえ、再び購入して頂くことへのハードルはまだまだ高いままです。今回のワークショップで見えてきたように「消費地」でのニーズを基に取り組むことで新たな可能性が生まれ、飲食店とのコラボ商品や、地域内連携による新しい商品作りなどに繋がれば、農業界の新たな復興・創生のモデルになりえると考えられます。
今後の活動の方針・展望:

ワークショップで得たものを生産現場で早速取り組み、今回参加頂いた皆さんと密に連絡を取り合える仕組みを構築し、販路・販売拡大に繋げるために定期的な会を、産地・首都圏で設けていきたいと思っています。

【本件に関する問合せ先】
法人名:有限会社 秀吉
担当:渡邉 昌也
Tel:019-681-1800
Fax:019-681-1800
Mail:info@chefswant.com
URL:http://chefswant.com/