平成30年10月2日と9日に、石巻市水産物地方卸売市場(宮城県石巻市)にて、「水産加工業セミナー」を開催しました。
今後石巻市では、復興特需の減少、人口減少、少子高齢化の進行等に伴う、消費の激しい落ち込みが懸念されます。そこで、第1回セミナーでは、水産加工業者の将来を考える機会として、「販路開拓」について学ぶセミナーを開催しました。
また、被災地で中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(グループ補助金)等を活用し、ハード面での復旧を果たした水産加工会社は、今後どのように事業資金を調達するか等の課題も抱えています。このため、第2回セミナーでは、水産加工業者の将来を考える機会として、「資金調達」について学ぶセミナーを開催しました。
①高木 順氏:高度情報処理技術者、中小企業診断士、ウェブ解析士。
事業ドメインを踏襲する顧客便益の確保など、経営の根本から強みを認識した経営戦略・情報戦略の策定、実行の支援。
②畠山 和敏氏:fifthbridge(フィフスブリッジ)代表、中小企業診断士。
多数の高齢者向け製品・サービス開発や両国間の国際連携支援に従事する中で、介護従事者の協力による製品開発支援体制の構築。
③渡辺 進也氏:有限会社まる進 代表取締役、中小企業診断士。
水産加工業の事業計画策定、経営相談等の実績、金融機関や行政機関等での創業塾・起業セミナーなどの講師。中小企業大学校仙台校、広島校、三条校等の講師。
<第1回セミナー>
「販路開拓」をテーマに、顧客(消費者とバイヤー)に向けて商品の魅力を伝えるFCP(Food Communication Project)シート作りと「売れる商品作り」に必要なポイントについて学びました。(講師:畠山氏、高木氏)
1)水産加工品を取り巻く環境は、以下のように変化しています。
・魚介類の消費量は平成13年をピークに減少しています。魚介類の消費量が減った理由としては、「調理の手間がかかる」、「匂い」、「後片付けが面倒」が考えられます。一方、加工用魚介類の割合は増加しています。
・顧客の嗜好は多様化しているものの、「すし」、「刺身」は安定して上位にあります。
2)環境が変化すれば、求められる商品も必然的に変わってきます。
3)ワークショップ「PRするポイント」
「実家で一人暮らしをするお母さんに、都会に住む娘が送る商品は」をテーマにグループワークを行いました。「顧客が求めるものは」という問いかけでは、「おいしさ」、「価格」と回答されますが、顧客をより具体化にすることで、味や価格以外の訴求ポイント(「量を食べないので、保存の利くもの」、「あまり料理をしないので、調理の手間がかからないもの」、など)が出てきました。
4)講座の振り返り
・FCPシートは、商品の魅力を伝える為に作成するものなので、顧客(消費者とバイヤー)に関心を持っていただくために、顧客に合わせて作ることが大切です。
・FCPシートを作るときは、「主要原産地は、具体的な産地をPRする」、「どのような方に買っていただきたいかを明確にする」、「どのようなシーンで食べていただきたいかを示す」などを留意する必要があります。
<第2回セミナー>
「資金調達」をテーマに、「資金調達手法」と「事業計画のポイント」について学びました。(講師:渡辺氏、高木氏)
1)資金調達
・資金の調達手法として「補助金・助成金」、「融資」、「ファンド・出資」があります。それぞれの特徴を理解したうえで、活用することが必要です。
補助金・助成金 |
融資 |
ファンド・出資 |
|
返済義務 |
なし |
元本と利子を返済 |
なし |
面倒さ |
審査項目に合致した事業計画を策定する |
金融機関が貸したい企業には、煩雑さは少ないことが多い |
詳細な事業計画を策定し、何度もブラッシュアップを行い、協議しながら進める |
審査の ポイント |
目的に合っているか 審査基準 |
返せるか お金の使い道 会社(社長)の魅力 |
事業・企業の成長等 |
監査 |
必ずあり |
多額、要チェックの場合にはあり |
必ずあり |
リスク |
補助金が不交付 補助金返還など |
融資が受けられない |
経営権剥奪、乗っ取り、M&A、反対決議 |
2)お金の借り方
・融資申し込み時は、「いつ必要か」、「何にお金を使うか」、「どうやって返すか」、「万一の場合どうするのか」がポイントになる。
3)事業計画策定のポイント
・企業概要の記載項目
「社名」、「設立年月日」、「資本金」、「決算期」、「年商」、「役員構成」、「従業員数」、「沿革」、「事業内容」、「特色・特徴」等
・販売商品/サービスの記載項目
「商品/サービス内容」、「コンセプト」、「顧客ターゲット」、「商圏」「市場規模」、「販売価格」、「利益率」、「販売戦略」、「競合との優位性」、「真の価値(顧客便益)は何なのか」等
・課題と解決策の記載方法
「事業実施上の障壁」、「設備投資すれば解決するのか」、「課題はどこにあり、どんな行動で解決をもたらすのか」、「そのために誰と連携し、どんな資源や手法を用いる必要があるのか」等
・実施体制・スケジュールの記載方法
「いつ・どのくらいの期間で・だれが・なにを・どうする」、「一人なのか、数人なのか、チームなのか」、「どんな役割分担で行うのか」、「責任と権限を明確にする」、「行動に落とせるレベルで細分化されていること」等
・収支計画の記載項目
「売上予測」、「費用予測」、「資金繰り」、「資金計画」、「返済計画」等 受講後のアンケートでは、71%の方が「理解できた」、50%の方が「満足した」、43%の方が「参考になった」と評価いただきました。特に印象に残った事として、「商品を販売する際に、顧客目線とバイヤー目線の2つを別々に持つこと」などのコメントをいただきました。