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震災復興応援イベント「3.11 from KANSAI 2020~長い目、広い目、そらさぬ目~」

 令和2(2020)年8月20日(木)13:00~17:45に、梅田スカイビル タワーイースト36Fスカイルーム1(大阪府大阪市北区)およびオンライン会場にて、震災復興応援イベント「3.11 from KANSAI 2020~長い目、広い目、そらさぬ目~」を開催しました。

主催:
3.11 from KANSAI 実行委員会
開催日時:
令和2(2020)年8月20日(木)13:00~17:45
開催場所:
梅田スカイビル タワーイースト36Fスカイルーム1(大阪府大阪市北区)およびオンライン会場
参加人数:
総計122人
●対面参加者63人(参加者19人、協賛企業9人、ボランティア7人、NHK取材4人、登壇者3人、実行委員および関係者21人)
●オンライン参加者:59人(参加者56人、登壇者3人)※後日閲覧者129人
事業内容:

■事業の背景・目的

 東北3県の復興状況について、東北から全国へ情報発信努力は続けているものの、世間の関心の薄まりのスピードが早く、風化が進んでいることは否めません。とりわけ、物理的距離のある大阪・関西での関心の薄れ・風化は著しいものがあります。  「風化」「東北の復興状況が伝わらない」という東北が抱えるいまの課題を解決するためには、東北の復興の課題や実践から得られる知見を生の声とともに、大阪・関西で伝える機会が必要です。
 震災復興応援イベント自体は年1回の開催ですが、イベント終了後から次回のイベントまでの1年間に、実行委員会構成団体(一般財団法人ダイバーシティ研究所/認定NPO法人トゥギャザー/NPO法人遠野まごころネット/NPO法人ユースビジョン/社会福祉法人大阪ボランティア協会)それぞれが、「新しい東北」の創造のために諸団体と情報交換や交流を行った知見を、「東北のいま」として東北のゲストとともに大阪・関西へ情報発信し、ともに考える機会としました。

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■発表内容・質疑応答

(1)第1部「東北のいま~3.11の経験を、長い目、広い目、そらさぬ目でどう生かせたか」

 岩手、宮城、福島からゲストを招き、東日本大震災から9年を振り返り、「東北のいま」について紹介していただきました。また、「令和元年台風19号災害」の救援や復旧活動において、3.11およびその後の取り組み経験をどう生かせたかを討議し、来年の10年をどう迎えていくのかを考えました。

第1部・キーノートスピーチ:一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事/復興庁 復興推進参与 田村 太郎さん

 東日本大震災から来年で10年を迎える東北は、ハードの復興は進んできているものの、ハード以外は復興途上であることに言及。3.11の経験を「長い目」(長期の復興の視点から捉えた課題は?)、「広い目」(日本・世界の変化の、この10年の復興への影響は?)、「そらさぬ目」(被災地への関心を持続させるために必要な取り組みは?)でどう生かせたのか、という問いかけがありました。震災から10年を迎える東北の「その先」を支えることは、今後の災害対策にとっても重要であることを確認しました。

第1部・パネルディスカッション「岩手の現状」:NPO法人いわて連携復興センター 代表理事 葛巻 徹さん

 今後に向けた行政や社協との3者連携の強化の必要性や、県域を越えたコーディネート機能とシンクタンク機能としての「一般社団法人みちのく復興・地域デザインセンター」を設置されたことなどのお話しがありました。
 今後は、ハード面での復興に加えて、地域課題を継続的に解決していくためのしくみづくりを進め、東日本大震災の復興経験を全国の被災地で活用されるような地域間ネットワークを構築していきたいと語ってくださいました。

第1部・パネルディスカッション「宮城の現状」:NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター 常務理事・事務局長 青木 ユカリさん

 宮城県震災復興計画に基づき、災害の伝承について取り組みを進めてきたが、このコロナ禍の中での伝え方の難しさに直面されていることや、9年を経た今でも仮設住宅には27人が住まわれ、まだ行方のわからない方もいて毎月命日に捜索を続けられていることなどのお話がありました。
 現在、県を巻き込んでの災害広域ネットワークづくりを進めていますが、地域の災害対応等の記録についてはまだ整理できていないとのこと。発災から10年が経って、支援活動を担う人が高齢化し、亡くなる方もいて、少し疲れが見えてきていることや、コロナ禍で築いてきたつながりをどう維持していくのかが課題となっているとのお話でした。

第1部・パネルディスカッション「福島の現状」:一般財団法人ふくしま百年基金 代表理事 山崎 庸貴さん

 空間放射線量、避難支援区域の割合、県外避難者の人数など、具体的な数字を示しながらご報告いただくとともに、農業生産物の価格が戻らないことや、福島第一原発の廃炉まで40年かかる計画であることなど依然厳しい状況下にあることを共有してくださいました。一方で、震災後、福島の中で地域課題を解決したいというNPOの活動が活発になっており、地域ならではの活動が展開されているそうです。
 コミュニティ財団の立ち上げにあたっては、県民ワークショップを開催してアイデアを出し合い、県外からも多くの支援が集まったそうです。この取り組みが、昨年の台風19号で生きたこと、今後さらに内部規定の整備やプログラムオフィサーのスキルアップを目指していきたいと話してくださいました。風化は県内でも進んでいて、強い危機感を持っておられること、今後より福島の環境を改善していくんだということを地元でも改めて確認し、「震災があったおかげで」と言える日がくるように前に進みたいと語ってくださいました。

第1部・パネルディスカッション「クロストーク」コーディネーター:NPO法人ユースビジョン代表 赤澤 清孝さん

「この10年間で得たことは?」
―3県ともに震災で自分の生まれ育った街が被災し、地元に戻って起業する若者が増えたことや、自分たちのまち課題を自分たちで解決していくんだという思いが強くなったのではないか。
「関西へのメッセージは?」
―復興支援はもちろん日常的につながっていきたい。また、災害大国として全世界に発信していくときはぜひ一緒に伝えていきたい。
「市民活動という視点からみたときには何をもって復興した、と言えるだろうか?」
―阪神・淡路大震災においても、東日本大震災においても、復興支援には終わりはない。市民社会という視点では、支えあいのしくみができていくことや、レジリエンスが高まったと感じられたときに、復興に少し近づいたと言えるのではないか。


第2部・パネルディスカッション「NPOの立場から」:特定非営利活動法人災害救援レスキューアシスト代表理事 中島 武志さん

 東日本大震災をきっかけに災害ボランティアの活動を始め、現在は、被災地での技術系プロボノ支援を専門に取り組んでいます。活動で大切にしていることは、ボランティアを地元につなぐこと、やる気のある若い力を育てることです。
 これからの夢は、「Re:yell Project」を立ち上げ、離れていても、全国からの応援を力に、被災地で頑張る人・団体を後方応援したい!と語ってくださいました。

第2部・パネルディスカッション「企業の立場から」:ヤフー株式会社 執行役員 SR推進統括本部長 西田 修一さん

 「UPDATE JAPAN」のスローガンのもと、様々なテーマで情報技術社会の発展を目指すYahoo!JAPAN。防災・減災や復旧・復興、啓蒙のサイクルのそれぞれのフェーズで必要なしくみづくりをされています。啓蒙・防災への取り組みでは、それぞれの個性に応じた備えを呼びかけるプロジェクト、「防災ダイバーシティ」( https://bosaidiversity.yahoo.co.jp/ )をご紹介いただきました。

第2部・パネルディスカッション「研究者の立場から」:宮崎大学医学部看護学科 教授 原田 奈穂子さん

 スフィア基準は、災害支援の質の保証と説明責任を初めて明文化したものです。せっかく生き残った命に、これ以上我慢をさせない基準です。第4版はSDGsの考え方も反映しており、世界が目指す防災・減災の取り組みについて明文化されました。支援者が対象者に我慢をさせない・被災者が我慢をしないためのツールであること、新型コロナウイルス感染症対応にも活用できる内容だとご紹介いただきました。
 スフィア基準が日本で広まらない理由として、ハンドブックの厚さ、言葉のとっつきにくさ、指標の呪縛を取り上げておられましたが、実際に使えるということを、益城町での実際の避難所事例を紹介いただきながら説明いただき、在宅避難に対しても具体的なアドバイスが書いてあり活用できるとのことでした。日本の災害支援の現場で、国際スタンダードが取り入れられることを願ってご紹介いただきました。
★スフィアハンドブック( https://jqan.info/wpJQ/wp-content/uploads/2019/10/spherehandbook2018_jpn_web.pdf

第2部・パネルディスカッション「クロストーク」コーディネーター:一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事/復興庁 復興推進参与・田村 太郎さん

「多様な担い手の連携やこれからの災害対応について」
―レスキューアシスト・中島さん:全国に呼びかけて子どもから高齢者、消防士など、さまざまな人が協力をして作った「アシスト瓦」のように「わかりやすいこと」はとても大事です。
―Yahoo!JAPAN・西田さん:災害時に自治体で使っている情報集約や記録様式などのデジタル化を進めていく際には、「標準化」と「オープン化」が必要という声があります。Yahoo!JAPANの「防災ダイバーシティプロジェクト」については、これまでみんなに必要なものを備蓄するという考え方から、世帯状況や性別やその人の特性を踏まえてパーソナライズされた備えについて提案しています。当人は何が必要か気づけていない場合があるので、それをICTなどで補えるのではないかという声もありました。
―宮崎大学・原田さん:これまでさまざまな問題が指摘されていた避難所運営についても、大規模収容から少人数収容へ、またコロナ禍での運営見直しが必要となっています。今までの延長線上ではなく、せっかく生き残った人たちの命を守れるような避難所のあり方を、スフィア基準も踏まえながら考えていくことが必要です。
―全体:「防災の日常化」、つまり「いつもの生活を見つめることから始めていこう」というメッセージがありました。

今回の事業の成果:

「おたがいさまの気持ちで、関西でできることの実行」を目的とした震災復興応援イベント「3.11 from KANSAI」を、東日本大震災の翌年から毎年3月11日(または直近の日曜日)に大阪で開催してきて、今回で9回目の開催となりました。
 今回は、2つのパネルディスカッションを通して、地球温暖化の影響などで「災害多発時代」ともいえる状況が生じている現実に立ち向かうために必要なこれからの取り組みについて、台風19号などで再び大きな被害を受けている東北の様子を改めて学ぶとともに、国際社会の動向や企業・行政・大学など多様なステークホルダーとの連携を軸にしながら、「誰も取り残されることのない防災」の新たなあり方を登壇者・参加者とともに考えることができました。

今後の活動の方針・展望:

今後も、東日本大震災の被災地や全国で避難生活を送る方々に思いを寄せ、震災復興応援イベントを通して、「関西から何ができるのか」を登壇者・参加者とともに考えていきます。次回は、2021年は3月に開催予定です。関心のある方はぜひご連絡ください。

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【本件に関する問合せ先】
社会福祉法人大阪ボランティア協会
担当:永井 美佳
Tel:06-6809-4901
Fax:06-6809-4902
Mail:office@osakavol.org
公式ホームページURL: http://www.311-kansai.com/
公式Facebook URL: https://www.facebook.com/311kansai/