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連携制度

連携セミナー制度

震災復興応援イベント「第3回東北被災地語り部フォーラム2021」

 令和3年2月28日(日)~3月1日(月)に、サンマリン気仙沼ホテル観洋(宮城県気仙沼市)にて、震災復興応援イベント「第3回東北被災地語り部フォーラム2021」を開催しました。

主催:
東北被災地語り部フォーラム実行委員会
開催日時:
令和3年2月28日(日)~3月1日(月)
開催場所:
サンマリン気仙沼ホテル観洋(宮城県気仙沼市)
参加人数:
135人
※新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として参加定員を会場定員の1/4に制限して開催しました。並びにバスでの案内プログラム(第1部、エクスカーション)についても乗車定員の1/2に制限して開催。加えて、インターネット環境を使用してのライブ配信も初めて採用し、450名の方が視聴しました。
事業内容:

■事業の背景・目的

 東日本大震災発災から10年を迎えようとしている今、それぞれの語り部が伝え続けてきた“思い”、“教訓”は災害伝承だけでなく、被災地から未災地への情報発信、学び合う地域間の交流を生む原動力になっています。そして、年月の経過により記憶の風化が進む中、語り部の役割と責任はさらに大きくなっています。これからも一緒に向き合って学び続けていくことは、語り部自身だけでなく、誰にとっても必要なことです。
 当フォーラムを通じて、被災地域間において災害や防災の情報だけに留まらず情報を共有し連携を発展させることで、持続可能な環境づくりを進め、「今、生きていくこと」について考える機会とします。加えて、これからの10年、その先の未来に向けて語り部が何を伝えていくべきかについても考える機会とします。今後の災害への備えだけでなく、新型コロナウイルス感染症の収束へ向けて、人と人の力を繋ぎ合わせて前進することが重要だと考えており、今回は気仙沼の地でフォーラムを開催し、連携と交流の輪を繋げて参ります。

■発表内容・質疑応答

第1部

 第1部では、気仙沼市内を案内する語り部バスのコースを2つ編成し、リアス・アーク美術館を巡るコースと市内を巡るコース、及び民間震災伝承施設「命のらせん階段」を参加者にて視察しました。
 「命のらせん階段」は、維持保存のため建物本体を曳家で約80m移動させる日本初の試みも進行中のため、参加者は歴史的な場面に立ち会う機会となりました。


第2部

 第2部は、開会式の阿部隆二郎実行委員長の挨拶、来賓挨拶に続き、気仙沼市出身で東北大学災害科学国際研究所シニア研究員の徳山日出男氏が、「「災害を書くこと・語ること」というテーマで基調講演を実施しました。基調講演では、語り部が「本質的な学びの機会」の提供となるための提案として、語り部の語りが「騙り」になったり、起こった事実が外的要因等により変化してしまわないよう、伝え手と聞き手の相互関係が大切であるというお話や、語り部が伝えることにより聞き手に日常の大切さに気づいていただくことが必要であるとのお話をいただきました。
 基調講演に引き続き、次の10年、その先の未来へ伝承を繋げていくために、次世代の語り部を代表して熊谷樹氏(宮城県気仙沼向洋高等学校3年/KSC(向洋語り部クラブ)全体リーダー)が「未来への志」と題してプレゼンテーションを実施いたしました。

パネルディスカッション

 パネルディスカッションは、「次の10年の語り部」というテーマで実施しました。東日本大震災から10年を単なる節目ではなく、通過点から再スタートする機会とすべく、パネリストそれぞれの知見と思いを共有する場となりました。
 コーディネーターとして、後藤一磨氏((一社)復興みなさん会代表)、パネリストには、佐藤敏郎氏(NPOカタリバアドバイザー・大川伝承の会共同代表)・青木淑子氏(富岡町3.11を語る会代表)・横山純子氏(丸文松島汽船㈱松島復興語り部クルーズ語り部)・齊藤賢治氏(大船渡津波伝承館館長)にご登壇いただきました。立場、場所、世代の違いを超えて意見交換することで、多様で持続可能な語り部活動を目指し、さらに交流を図っていくことを確認しました。
 今まで培ってきた語り部同士の縦(時間軸・歴史・文化)と横(交流軸・連携・学びあい)のネットワークを更に強固なものにするとともに、語り部の役割と責任として地域の課題解決にも向き合っていくことの重要性を共有したことで、語り部活動が今後も継続していくこと感じたパネルディスカッションになりました。


第3部

 第3部では、3分科会とステージトークの4グループに分かれてそれぞれのテーマで議論が深められました。各分科会とステージトークの登壇者、要点については以下の通りになります。

(第1分科会)テーマ「次の10年を繋ぐ次世代の語り部」

コーディネーター:雁部那由多氏(東北学院大学教養学部地域構想学科2年生・防災士)パネリスト:菅原定志氏(気仙沼市立鹿折中学校校長)・佐藤克美氏(気仙沼東日本大震災遺構・伝承館館長)・久保力也氏(㈱8kurasu/兵庫県立舞子高等学校環境防災科卒)・熊谷樹氏(気仙沼向洋高等学校3年生・KSC(向洋語り部クラブ)全体リーダー)

 「語り継ぐ」ということの原点は最小コミュニティである「家族」であり、父母が子へ、子が孫へといった形態で語り継ぎが行われていることが話されました。加えて、地域の中で生きる若者が次世代へ語り継ぎをしていくこと、その環境づくりに大人たちが取り組んでいくことで次世代の語り部が育成され、減災・防災につながっていくこの重要性が話されました。

(第2分科会)テーマ「震災遺構・人の記憶を繋いでいくために」

コーディネーター:原田吉信氏(3.11伝承ロード推進機構事務局長)パネリスト:山内宏泰氏(気仙沼リアス・アーク美術館副館長)・宮本肇氏(前北淡震災記念公園総支配人)・山﨑麻里子氏(中越防災安全推進機構アンバサダー)・佐藤ひま里氏(バレッドキッズ志津川教室・中学2年生)

 震災遺構を人の記憶の中に繋いでいくために最も重要なことは、残す遺構の質感を損なわないことです。「物言わぬ語り部」である震災遺構の存在は貴重ですが、残す「見るのが辛いという意見」「維持費がかかる」といった課題があります。「意義」を理解してもらうためにも、課題に真摯に向き合いながら、何をどのように遺し、何を伝えたいのかを議論することが大切です。遺構が形骸化されずに存在し、遺構が災害について学びを与える存在となることで、単なる「防災のため」だけでなく、未来へ災害の記憶を残すことになることが話されました。

(第3分科会)テーマ「KATARIBE」を世界へ

コーディネーター:岡崎克彦氏(仙台国際空港株式会社取締役航空営業部長)パネリスト:山内松吾氏(南三陸Jr.Academy主宰/元志津川高等学校校長)・ゲルスタユリア氏(東北大学災害科学国際研究所助教)・小宮隆嗣氏(㈱リクルートライフスタイル/じゃらんリサーチセンター東北チームリーダー)

 ツーリズムの視点で「震災遺構」と「語り部」についてのセッションが行われました。第二次世界大戦の悲惨さを伝える広島県の原爆ドーム、ナチスドイツの収容所として使われていた旧アウシュヴィッツ収容所などの遺構は「物言わぬ語り部」として現存し、戦争の悲惨さを後世に伝え続けています。一方、戦争という非日常を言葉を通じて伝える語り部も、遺構と同様に歴史上のできことである「戦争」を伝える力となっています。「遺構」「語り部」のどちらも歴史を伝承するものですが、語り部は歴史の伝承だけではなく、戦争という非日常の中での生活、恋についてなども描写しており「戦争」について別の角度からの学びにも繋がっていることが紹介されました。
 戦争の語り部と同様に「震災語り部」が、非日常下における人々の生活を伝えることは、震災や減災・防災についての深い学びを与えるのではないかという話がなされました。

(ステージトーク)テーマ「あの日を未来へ遺す」~決断と判断と検証の記録~

インタビュアー:小林裕氏(一般社団法人東北みらい推進機構副理事/元NHK報道局映像センター長)ゲスト:麻生川敦氏
(多賀城市教育長/元戸倉小学校校長)・佐藤健一氏(アジア航測㈱/元気仙沼市危機管理監)・佐藤由成氏(元高野会館営業部長)

 自然災害と向き合う場合、想定外のことが起こることを理解し、備えることが必要です。「備えたから大丈夫」ではなく、更にその想定を超えるケースを予測して行動する心構えが大切であることを、次世代へ伝えていく必要があります。これまで人間が経験して蓄積した災害の経験から、どんな行動が命を守ることにつながるかを伝えていくことが、未来の防災に繋がります。具体的には、避難行動を始めるのにかかる時間や避難に必要な時間、また、命を守れるような安全な避難場所の確保といった行動が必要となることを認識してもらうことの必要性が話されました。
 命を守る判断をしたリーダーたちの話の中で、「伝える」「遺す」「コミュニケーションの重要性」「信頼関係」が実際に命を守ることにつながった大切なキーワードとして挙げられました。そういったキーワードを未来へ伝承していくこと大切であること、判断する際はひとりよがりにならず、多くの人の意見や経験を踏まえて判断することが重要であることを学ぶ機会となりました。


写真


第4部

 第4部としてフォーラム閉会セレモニーが行われ、分科会総括報告を各分科会コーディネーターより発表頂き、未来へ災害を伝承することの大切さ、遺構を残す意味、多様化する社会の中で、多言語、オンラインによって災害を伝承していくことについて報告がありました。


今回の事業の成果:

時間の経過とともに風化が進んでいく中で、東日本大震災から10年をどのように検証しどう生かしていくか、待ったなしで考える必要があります。また、語り部の存在意義や伝える力についても、問われ続けています。先例を学び、未来に生かすことの大切さを知ることで、10年後に留まらず、100年後、1000年後にも伝えたいという思いが強まり、確実に被災地同士の連携が広がると考えています。
 新型コロナウイルス感染症の状況下ではありますが、感染収束を目指す一方で、語り部活動自体は絶やすことなく続けられ、今後も語り部たちから情報が発信されることが、参加者の共通理解になったと確信しております。

今後の活動の方針・展望:

今回の活動を通じ、次回開催の全国被災地語り部シンポジウムに向けて確実に繋がる機会を気仙沼の地で作ることができました。今後も語り部活動を普遍的、持続可能な取組として広げていきたいと思います。

【本件に関する問合せ先】
東北被災地語り部フォーラム実行委員会事務局
担当:伊藤俊
Tel:0226-24-1200(サンマリン気仙沼ホテル観洋内)
Mail:s_ito@kanyo.co.jp