みやぎボイスは東日本大震災翌年2012年から日本建築家協会東北支部主催の災害復興支援活動報告シンポジウム「つながるボランティア」、「震災復興と専門家の連携」を契機に、市民、行政、専門家が集い、地域の共通のテーマ、課題の共有、解決のための協働・共創を行うプラットフォームとして2013年以降、毎年開催してきました。「みやぎボイス2018」では「次の社会の在り方につなげる試み」をテーマとして議論を深めました。
今回は、2018年9月4日(火)より仙台を会場に開催される日本建築学会大会[東北]の連携シンポジウムとして、日本建築学会との共催という形をとることができました。
会場では、最初にみやぎボイスの目的と、過去6年の経過と評価を紹介し、今回の「みやぎボイス2018」のテーマ「次の社会の在り方につなげる試み」の主旨説明を行いました。
イベント自体を大きく三つの時間帯に区切り、3つのテーブルを設けて時間帯ごとにテーマを設定し、テーマごとに深い議論が展開されました。
閉会時にはみやぎ連携復興センター代表理事木村正樹氏から総括が述べられ、今後もみやぎボイスは市民・事業者・行政・支援者・専門家のプラットフォームとして、復興まちづくりに地域と一緒に取り組んでいくことを確認しました。
翌日には被災地の復興状況を視察するツアーも行い、幅のあるイベントとすることができました。ツアーでは帰宅困難地域の指定が続く福島県双葉郡大熊町、復興事業が始まった福島県双葉郡楢葉町、そして、復興事業の総仕上げとして町役場を再建中の宮城県亘理郡山元町を視察し、参加者に復興の現場を体験してもらいました。参加者からは復興というくくりの中に極めて多様な現実があることへの驚きとともに、復興は土木、福祉、建築と様々な事業の結集で進んで行くことを改めて感じた、というコメントをいただきました。
各テーブルのテーマ、発表概要は以下のとおりです。
ラウンドテーブル1 深掘りする
- ・テーブルA「平時に活かせる復興の経験・技術」
- 宮城県気仙沼市、宮城県牡鹿郡女川町、宮城県石巻市での復興の軌跡を紹介しながら、うまく進んだこと、思い通りにならなかったことなどの総括をし、それらの知見を平時にどのように活かすことができるかについて議論が行われました。
- ・テーブルB「失われた何かの回復」
- 福祉分野におけるケース会議の形式を用い、支援を必要としている被災者に対して、異なる分野の専門家がどの様に支援できるかのアイデアを出しながら、支援体制の現状などについて議論しました。
- ・テーブルC「被災地経済と新たな産業立地・集積の可能性」
- まず、宮城県、東京商工リサーチ、中小機構それぞれの立場のパネリストから、震災後の東北の経済・産業の実態、復興支援策の成果と課題についてお話しいただきました。次に、研究者の立場から、企業アンケートに基づく投資・立地活動の計量地理学的分析と、復興交付金・復興基金等に関する財政学的研究の報告を行っていただきました。さらに、仙台市経済局の担当者に仙台市・蒲生北部における防集移転元地の産業利用の事例を、公益財団法人地域創造基金さなぶりの理事に民間財団による復興支援団体への資金提供の実態を紹介いただきました。これらの話をもとに、テーブルCのオーガナイザーである増田氏(国立大学法人東北大学)と地域創造基金さなぶり理事を中心に話しあった結果、これからの経済復興・産業再生のキーとして、「エビデンスベースの政策評価」の必要性が結論の一つとなりました。
ラウンドテーブル2 横に繋ぐ
- ・テーブルD「福島についてみんなで考える」
- これまで取り扱ってこなかった福島の被災・復興の現状について情報共有を行いました。福島県双葉郡大熊町、福島県双葉郡浪江町、福島県双葉郡楢葉町の町関係者や復興支援専門家らから直接話題を提供いただき、福島の困難な現状について理解すると共に、宮城における復興状況の比較などより、これからの復興に関する様々な知見や思いを共有しました。
- ・テーブルE「民官連携とマチの生業づくり」
- 宮城県石巻市、宮城県石巻市雄勝町、宮城県牡鹿郡女川町などの沿岸被災地で民間事業を展開している事例を紹介しながら、民と官の連携の在り方、持続可能な生業づくりの可能性について議論が行われました。
- ・テーブルF「移転元地の土地利用と復興まちづくりへの展開」
- 防災集団移転事業や災害危険区域指定に伴う移転などによって発生する移転元地について、全国の様々な事例を参照しながら、復興まちづくりへの展開の可能性について幅広く議論しました。
ラウンドテーブル3 次に繋げる
- ・テーブルG「災害復興の変遷から見えるもの」
- 日本国内でこれまでに記録された大火、地震、津波などに対して、それらの災害復興の軌跡を振り返りながら、今回の東日本大震災時に何が引き継がれ、今後に向けてどのような法的整備が必要なのかについて議論しました。
- ・テーブルH「東北から九州へ」
- 熊本地震の復興に携わっている方々をお招きし、東日本大震災時のノウハウが如何に活用されたか、またされなかったなどについて情報交換するとともに、今後も起こりうる国内の災害に対する備えについて議論しました。
- ・テーブルI「伝承、報道、そして事前復興へ」
- 県内各地で実施されている震災伝承に関する取組を参照しながら、報道や広報の実態について確認するとともに、事前復興に向けた意見交換をしました。
今後の予定としては、速やかに「みやぎボイス2018」報告書をまとめ、ご後援、ご参加いただいた皆様にお届けするとともに、広く社会に発信していきます。
また、今回の反省などを活かしながら、次回のみやぎボイスに向けて準備を進めていく予定です。