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協議会の活動

活動紹介

令和5年度12月26日(火)に「新しい東北」みやぎ復興ツーリズムフォーラム ~未来につなぐ 東北のものがたり~ を開催しました。

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 「新しい東北」官民連携推進協議会は、今年度も宮城県を拠点とする協議会の副代表団体等による意見交換会を実施しています。
 意見交換会では、昨年度より、2025年の大阪・関西万博等により、国内外から東北に訪れる方が生じる機会をとらえ、宮城県の防災に関する学びの情報発信等につながるよう、宮城県沿岸をエリアとしたエクスカーションプログラム(会議後の視察プログラム)の造成等に取り組んできました。
 特に、令和5年度の取組としては、プログラムの実現と自走化を目指してプログラムのブラッシュアップに取り組み、2本のプログラム、訪日外国人向けモニタリングツアー1本を試行しています。
 こうしたエクスカーションプログラムの実施報告を行うととともに、県内で観光振興に携わる関係者やツーリズム分野の有識者によるパネルディスカッションや、県内唯一の観光科をもつ県立松島高等学校と連携して実施した取組の紹介等を通じて、観光・国際会議関係者等と「面」としての観光コンテンツの磨き上げるに関するヴィジョンを共有することを目的として、2023年12月26日(火)13:30~16:00に「「新しい東北」みやぎ復興ツーリズムフォーラム~未来につなぐ 東北のものがたり~」(主催:「新しい東北」官民連携推進協議会(宮城県、東北大学、七十七銀行、みやぎ連携復興センター及び復興庁))と題したフォーラムを開催しました。
 フォーラム当日は60名近くの観光・国際会議関係者等に集まりいただきました。本稿では、このフォーラムの模様をレポートします。

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(当日のプログラム内容)

1.開会(開会挨拶/開催趣旨説明)
2.基調講演  ~宮城県における観光・震災復興の現状~
登壇者:宮城県復興・危機管理部復興支援・伝承課長 樋口 保 氏
3.事業紹介 ~宮城県内エクスカーションプログラムについて~
登壇者:
株式会社たびむすび 代表取締役 稲葉 雅子 氏
「新しい東北」官民連携推進協議会事務局
4.パネルディスカッション ~みやぎから届け!未来のツーリズムを支えるものがたりの作りかた~
ファシリテーター:JTB総合研究所 客員研究員 後藤 直哉 氏
パネリスト:
TB総合研究所主席研究員兼(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会理事 山下 真輝 氏
宮城県観光連盟事務局次長/みやぎ教育旅行等コーディネート支援センターセンター長 三浦 均 氏
株式会社みらい旅くらぶ 代表取締役 高谷 尚嗣 氏
株式会社たびむすび 代表取締役 稲葉 雅子 氏
宮城県 復興・危機管理部復興支援・伝承課長 樋口 保 氏
事例紹介:宮城県松島高等学校観光科との連携による取組
ゲスト:宮城県松島高等学校観光科有志の皆様
5.閉会(閉会挨拶)

■1.開会 ~ 2.基調講演

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 復興庁・後藤参事官より開会のご挨拶をいただいた後、宮城県復興・危機管理部復興支援・伝承課長 樋口氏より、「宮城県における観光・震災復興の現状」に関する基調講演をいただきました。
 県内の観光の状況として、
 ・震災後、ボランティアツーリズムや買い物などで被災地に訪れていただくなど、観光復興の取組が進められた結果、平成29年に震災前の水準を上回り、令和元年には過去最高値を更新していたこと、
 ・一方で、「観光業は風に左右される」と言葉がある中で、特に東北においては、「風化」と「風評」という風と戦っていかないといけないステージにあること、
 ・そのような中で、県内の観光資源を活かして宮城・東北に来ていただき、さらに被災地や伝承施設・震災以降に訪れていただくような取組を進めることが重要であること
 等に言及いただくとともに、
 ・教育旅行の誘致、企業向け研修の構築に向けた宮城県の取組、
 ・無関心層へのアプローチなど個人旅行で沿岸部を訪問していただく際の課題・取組事例等についてご紹介いただきました。

■3.事業紹介 ~宮城県内エクスカーションプログラムについて~

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 今年度取り組んだ2本のエクスカーションプログラム・1本の訪日外国人向けモニタリングツアーの概要を説明するとともに、スルーガイド(※)としてこれらのプログラムに参加された株式会社たびむすび 代表取締役 稲葉氏より、ガイドする上でスポットとなる「点」同士をどのように繋げ、ストーリーを紡いでいくのか、その際の課題は何なのかについて、お話いただきました。
 ※ 今回のフォーラムの中では、行程全体を通して説明いただくガイドをスルーガイドとお呼びしています。
 スルーガイドには、各スポットに関する知識だけでなく、各スポットを繋ぎ、「面」として見せるためのストーリーテリングが求められます。
 こうした中、ガイドとして意識した点としては、
 ①訪れる方の属性を事前に把握しておくこと、
 ②把握した訪れる方の知識に合わせて、東北地方や被災地、震災についての知識を資料も活用しつつ事前にインプットすること、
 ③次に訪問する場所での体験ストーリーを補完する説明を行うこと、
 などが挙げられました。
 また、ストーリー性をもったツアーを企画するためには、ツアーの企画する方が最初のものがたりびととして、どのようなストーリーを伝えたいのか、企画段階で考え、関係者間で共有していくことが重要という示唆をいただきました。

■4.パネルディスカッション

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 パネルディスカッションでは、「~みやぎから届け!未来のツーリズムを支えるものがたりの作りかた~」と題して、宮城県内で観光に携わるパネリスト4名と、外部有識者としてJTB総合研究所の山下氏も迎え、宮城県を訪れた人々に復興の歩みを「点」ではなく、ストーリー立てて「面」で感じてもらうために必要なことを意見交換していただきました。

 ディスカッションの導入として、JTB総合研究所・山下氏より「ものがたりをつなぐストーリーテリング~スルーガイドの必要性~」と題して、経験価値の高い観光について、事例も交えながら話しいただきました。
 何が観光資源なのかということを考えた時に、来訪者が本当に興味を持っているのは、目に見える観光資源だけではなく、地域住民のライフスタイルであるということ等をお話しいただくとともに、十勝岳ジオパークでのアドベンチャーツーリズムの事例(十勝岳噴火と人々の暮らしの結びつきというストーリーを伝えるため、ジオ的なイントロダクションから地元食材を通じた農業との結びつき、住民との交流を含めたアクティビティ・コンテンツを盛り込む)等を紹介いただき、その土地の環境、生活や文化を知るためには導入となるストーリーが重要であり、来訪者が求める情報と地域の人が伝えたいストーリーとのギャップを埋めるためには、スルーガイドが重要であること等をお話いただきました。

 次にパネリストを交えて、
 ①スルーガイドの必要性、
 ②来訪者と地域が、及び事業者どうしが繋がるための方策
 というテーマでディスカッションを行いました。

 「①スルーガイドの必要性」というテーマについては、
 ・スルーガイドの育成ということについては宮城県では今まで取り組まれてきていなかったが、オーダーメイドで行程を作り、ストーリー性をもって案内するということは宮城への来訪者の経験価値を高めるために可能性が大きいと考えられること
 ・教育旅行の分野では、来放者側からの行きたい・学びたいという考えと受け入れ側の来て欲しい・伝えたいという思いを調整する役割をみやぎ教育旅行等コーディネート支援センターセンターが果たしていること
 ・ガイドを行う難しさと企画する難しさがある中、訪問者に何をどう伝えていったらいいか、企画者やガイドも含めて十分にコミュニケーションをとることが重要であること
 ・スポットだけではなく複数の体験・訪問でストーリーを伝えるためには、シンプルではあるが、それぞれの場所でのガイディング内容をお互いが体験することなどが有効であること
 といった意見が交わされました。

 また、「②来訪者と地域が、及び事業者どうしが繋がるための方策」というテーマについては、
 ・復興ということを伝える際には、相手に合わせて話ができるという人が喋るということのメリットを踏まえ、あの日どうだったかということだけではなく、今に至るまでの話を説明者自身が理解することが重要であり、実体験として、現地への訪問など日々勉強が必要と感じていること
 ・コーディネーター側の視点としては、何が資源なのかを把握すること、訪問者の情報(教育旅行で言えば、生徒に学ばせたいこと、学びによりどのような変化を期待しているかなど)をツアーに関わる方々と共有することが重要となること
 ・受け入れ側の地域では、1人1人の顔の見える関係を作り、例えばお土産屋さんなど観光地の人たちが被災の状況を分かり話ができる、反対に語り部さんたちが宮城の観光の魅力も話せるようになっておくという状況になっていくことが、今後は求められるのではないかということ
 といった意見が交わされました。

 また、関係機関間の連携に向けた取組として、教育 旅行受け入れ関係者の情報交換会や、震災伝承コンソーシアム(語り部団体、民間企業、行政、マスコミなど70の団体が加盟)での情報交換・議論が進められているという状況が共有されました。
 このほか、広島でのツーリズム協議会での事例が紹介され、実際に外国人の旅行客が訪れるが、彼らの興味関心は、過去の原子爆弾の話が、今生きてる人たちにどういう風に繋がってるかということであり、ガイドとしても必ず未来の話をする、ということなどが共有されました。

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 最後に取組事例紹介として、「宮城県松島高等学校観光科との連携による取組」が紹介されました。
 今年度、協議会の宮城県の取組として、県内唯一の観光科をもつ宮城県松島高等学校に協力いただき、「東北地方に人を呼び込む、コンテンツの情報発信」をテーマとして、『TOHOKU WALTZ & INVITATION』という取組を進めてきました。
 これは、施設等の客観的な紹介ではなく、震災からの復興の物語を含む自身の体験を主観的に伝えることで、共感に訴え、来訪者の興味を引き付ける、そして、東北地方に訪れた方が円を描くように様々なスポットを巡るような取組になることを目指しての取組です。
 (出来上がった制作物については、下部の資料を参照ください。)
 フォーラムでは取組の趣旨・内容が説明されるとともに、松島高校の生徒の皆様から取り組んだ感想が発表されました。
 生徒の皆様からは、「自身の思い出を思い出すのに苦労もしたが、思ったより色々な思い出があった。作成にあたって両親に相談し、仲が深まった。宮城に来る方にも実際に足を運んで体験してほしい」「家族との思い出が一番強いエピソードを選んだ。大変だったけど、やってみると楽しかった。他の県の人にも来て同じような体験をしてほしい」といった感想をいただきました。担当の先生からも「恥ずかしながら自分自身ワクワクしながら参加していました。こうした機会を観光課の子供たちの成長に役立てていきたい」といった感想をいただいています。

■フォーラムを終えて

 フォーラムを通して、参加者からは「松島高校の取り組みや、インバウンドに携わっている方の生の声が聞けたことと、欧米で主流となっているスルーガイドについての知識が得られた」との声や「復興ツーリズムの第2段階というか、新しい復興ツーリズムの形を模索できるといいなと思いました。内外の様々な視点を集約して、復興ツーリズムのもつ可能性を深耕できる場を模索していきたいと考えます」といった前向きなご意見もいただきき、実りあるフォーラムになったものと考えております。

  最後になりますが、今回の取組は、エクスカーションプログラム等の実施に協力いただいた皆様、登壇者の皆様、松島高校の皆様のご協力なくては実現できませんでした。この場をお借りして深くお礼を申し上げます。

 今後も東北地方の魅力発信に繋がるよう、官民連携で取組を推進してまいります。

■フォーラムの模様(YouTubeリンク)

 新しい東北 みやぎ復興ツーリズムフォーラム

■資料掲載リンク

みやぎ復興ツーリズムフォーラム投影スライド
TOHOKU WALTZ&INVITATION(冊子)

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