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企画から訪問まで、「行きたい!」「会いたい!」を実現する 三陸沿岸を訪れ、復興の姿を知る”三陸沿岸学び旅・交流プログラム” 開催レポート

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 「新しい東北」官民連携推進協議会では、今年度も、岩手県を拠点とする協議会の副代表団体等(岩手県、岩手大学、岩手銀行、いわて連携復興センター及び復興庁)による意見交換会を実施しています。
 意見交換会では、震災から12年が経過する中で、震災後にあった内陸部から沿岸部への支援や交流の減少や、特に若年層における震災の記憶の風化という状況を踏まえ、特に若い方々を対象として「沿岸と内陸を繋ぐ」ことをテーマとした取組を企画してきました。
 本年度は、今一度、内陸の若い方々に三陸沿岸の復興の姿や魅力を知っていただくことを目的として、県内外の大学生や若手社会人から参加者を募り、参加者自ら三陸沿岸の事業者とも協議しながら、オリジナルの三陸沿岸ツアーを考案・訪問するという企画を実施しています。
 本稿では、11月25日(土)26日(日)に、実際に大学生・若手社会人の計7名が三陸沿岸部を旅したため、この旅の模様をレポートします。

<<旅の企画~事前ワークショップの開催~>>

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 旅の企画のため、10月14日(土)に岩手県公会堂地下の若者カフェ(盛岡市)にて事前のワークショップを開催しました。【久慈エリア】・【宮古・釜石エリア】・【大船渡・陸前高田エリア】という3つのエリアについて、それぞれの地域の現地コーディネーターが、その魅力や訪問先候補を紹介。その後、参加者の皆さんに「行きたい!」エリアを選び、各エリアごとのツアー内容を検討していただきました。
 ツアー前にはそれぞれの地域の事業者と参加者との間でオンラインの打ち合わせを行い、さらに体験したいコンテンツの深堀を行いました。

※(参考)いわて若者カフェhttps://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/seishounendanjo/wakamono/1004957/1004959.html

 こうして出来上がったのが以下の3つのコースです。訪問場所を参加者の感想も交えてご紹介します。



<<久慈エリア>>

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【エリア概要】
 連続テレビ小説『あまちゃん』でも登場した「北限の海女の町」である久慈は、国内最大の琥珀の生産地としても有名です。
 「三陸ジオパーク」のジオサイトが点在する自然豊かな地域ですが、東日本大震災では多くの建物が全壊する被害に見舞われました。現在は復興への歩みを着実に進めています。今回は3名の参加者が久慈エリアを巡りました。


【道の駅 青の国ふだい 周辺散策】
 久慈チームは、久慈駅から三陸鉄道で普代駅へ移動し、道の駅ふだい周辺の散策からスタートしました。道中で、地域おこし協力隊の中村さんが、ご自身で作られた野菜などをアビーロード商店街で販売されているところに遭遇。中村さんが育てたお野菜で作った豚汁をいただきながら、有機農業の取組や農業法人設立にチャレンジされているお話など伺いました。

(参考)岩手県普代村総合観光サイト 青の国ふだい https://aonokuni.jp/


【体験村たのはたネットワーク 番屋エコツーリズム体験】
・大津波語り部&ガイド
 事前の計画ではさっぱ船体験を予定していましたが、荒天により体験不能に…。代わりとして、語り部さんに震災前と直後、そして現状の街並みの変化や、震災当時の様子を解説していただきました。杜氏の状況などの写真と共に街を歩きながら詳しく教えていたことが印象に残っています。

・塩づくり体験
 番屋の塩作りの歴史から作成方法まで説明を聞き、海水を煮詰めるための薪割りから、塩を乾燥させる工程まで体験しました。一般的な食塩との味比べも面白かったです。

(参考)番屋エコツーリズム https://tanohata-taiken.jp/


【久慈琥珀博物館】
 久慈と言えば、やはり琥珀。久慈琥珀博物館では琥珀の歴史や久慈琥珀の希少性を学ぶことが出来ました。また、世界唯一の見学用琥珀坑道跡を見学し、実際の採掘作業を疑似体験しました。

(参考)久慈琥珀博物館ホームページ https://www.kuji.co.jp/museum


【久慈地下水族科学館 もぐらんぴあ】
 もぐらんぴあでは特別に宇部館長よりご案内いただきました。
 震災当時の状況、その後の復興にあたっては、さかなくんを始めとして多くの方の支援があったこと、再建には震災の教訓が活かされていること等について詳しくご説明頂いたほか、南部ダイバーの実演も見学出来ました。

(参考)久慈地下水族科学館 もぐらんぴあホームページ https://www.moguranpia.com/



<<宮古・釜石エリア>>

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【エリア概要】
 鉄鋼とラグビーの町として知られる釜石を散策するほか、牡蠣や帆立の養殖が盛んな山田町、「津波防災の町」として知られながら東日本大震災の影響で甚大な被害が出た宮古市田老地区などのエリアを2名の参加者が巡りました。


【釜石駅 周辺散策】
 新花巻から釜石駅に到着後、漁港、防波堤まで歩き、復興の様子を伺いました。昼食には昔から地域の鉄工所の工員や漁港関係者に愛されてきた「釜石ラーメン」をいただきました。

(参考)釜石観光物産協会公式サイト 釜石の観光 かまなび https://kamaishi-kankou.jp/


【織笠駅 周辺散策】
 三陸鉄道リアス線で折笠まで移動し、折笠漁港まで歩きました。この地域はアニメ映画『すずめの戸締まり』の重要な場面でも登場し、聖地巡礼スポットにもなっています。漁港前の展望広場には映画にも登場した「後ろ戸」のオブジェ、「脚の足りない椅子」も設置されていますので、撮影スポットとしてオススメです。


【山田町観光協会 体験観光】
・牡蠣の殻剥き体験
 事前の計画では、折笠漁港から漁船に乗り、漁業体験をする予定でしたが、荒天のため、漁師さんや観光協会の方にレクチャーを受けつつ牡蠣やホタテの殻剥き体験をしました。近海で獲れた貝類はどれも絶品で、他県ではあまり見られない「アカザラガイ」などもいただきました。作業後は、漁師さんから震災当時の貴重なエピソードを聞くこともできました。

・震災語り部まち歩き
 新生やまだ商店街の方にガイドいただき、山田町内を巡り、震災当時の被害状況、復興の道のりを見学しました。山田町は東日本大震災で漁港付近が甚大な被害を受けたため、高台に町の機能をコンパクトに集約して、新たな町づくりに取り組んでいます。「今後、津波による犠牲者を一人も出さない」ことを目標にした町づくりの経緯を学ぶことができました。

(参考)一般社団法人 山田町観光協会 東北・岩手・山田町の観光情報サイト https://www.yamada-kankou.jp/


【宮古観光文化交流協会 田老学ぶ防災ガイド】
 宮古観光文化交流協会の鈴木さんにガイドいただき、田老駅周辺を巡り、被災当時の状況や復興の様子を聞きながら現在の様子を見学しました。過去の津波被害から三度に亘って防潮堤が建設された町の歴史を聞き、津波で破壊された防潮堤や新設された防潮堤等を見学しました。また、景勝地・三王岩では宮古のジオサイトの魅力をお話いただきました。最後はたろう観光ホテルにて、被災当時の貴重な映像を観させてもらい、改めて震災の記憶を思い起こしました。
 26日はちょうど、田老野球場駐車場にて「鮭あわび祭り」が開催されており、大きな賑わいを見せていました。海とともに生きることの意味を感じた2日間でした。

(参考)宮古観光文化交流協会ホームページ https://kankou385.jp/



<<大船渡・陸前高田エリア>>

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【エリア概要】
 陸前高田市は、東日本大震災の津波で市の中心部に壊滅的な被害を受けましたが、その後復興した市には「奇跡の一本松」がシンボルとして残り、復興まちづくりが進められています。隣接する大船渡市は自然豊かな地域で、碁石海岸は景勝地として有名です。2名の参加者がこのエリアを巡りました。


【椿の里・大船渡ガイドの会 碁石海岸ガイド】
 椿の里・大船渡ガイドの会の方に碁石海岸をご案内頂きました。碁石のような礫が積み重なった碁石海岸や、ジオパークにも指定されている複雑な地形を見学しました。

(参考)一般社団法人大船渡市観光物産協会ホームページ https://sanriku-ofunato.or.jp/guidenokai/


【キャッセン大船渡】
 キャッセン大船渡へ移動し、まちづくりプロデューサーの千葉さんから講話を聞きました。その後、防災✕観光アドベンチャー「あの日」を体験しました。「あの日」は東日本大震災の経験を基に作られたアドベンチャーゲームで、街中を歩きながらQRコードを読み取り、「生きる知恵」を集めながら高台に建つ「賀茂神社」を目指す内容で、ゲームを通して防災知識を学べます。ゲーム内では「動けなくなっている人を助けるか」といったシリアスな選択を迫られ、選択肢によっては持ち時間が減ってしまうといった要素もあり、臨場感をもって、震災の教訓を学び、事前の準備の大切さを改めて学びました。

(参考)キャッセン大船渡ホームページ https://kyassen.co.jp/


【かもめテラス】
 銘菓「かもめの卵」を製造する「かもめテラス」では銘菓かもめの卵の歴史に加えて、大船渡高校出身の佐々木朗希選手にまつわる品々を展示していました(千葉ロッテマリーンズとスポンサー契約を結んでいるとのこと)。また、冬季ということで、施設がクリスマスの雰囲気にデコレーションされていました。

(参考)かもめテラスホームページ https://kamometerrace.com/


【大船渡温泉・志田社長による震災講話】
 夜は大船渡温泉・志田社長から震災に関する講話を聞きました。
 「被災者や復興のために働く人たちをお風呂に入れてあげる『銭湯』が大船渡温泉の設立コンセプト」とおっしゃる社長の思いに胸を打たれました。また、沿岸地域の観光振興にかける想いや構想などをお話しいただき、復興に向かっていくための関係人口、交流人口の拡大への取り組みについて「面」で取り組むことの重要性を改めて学びました。

(参考)大船渡温泉ホームページ https://oofunato-onsen.com/hot_spring/


【東日本大震災津波伝承館 いわてTSUNAMIメモリアル】
 高田松原津波復興記念公園内で位置する「海を望む広場」や「奇跡の一本松」など散策しながら見学することで、町全体を飲み込んだ津波の破壊力を改めて思い知りました。東日本大震災津波伝承館では、津波に飲み込まれた消防団の車両などにより津波の威力の大きさ等を改めて認識するとともに、国土交通省東北地方整備局の災害対策室の移設物等により、緊迫した当時の状況を目の当たりにしました。

(参考)東日本大震災津波伝承館 いわてTSUNAMIメモリアルホームページ https://iwate-tsunami-memorial.jp/


【ワタミオーガニックランド】
 ワタミオーガニックランドは、農業テーマパークとして2021年にオープンした施設です。復興✕農業の取組を学ぶことができ、他にもBBQや農業体験などを楽しめる施設となっています。

(参考)ワタミオーガニックランドホームページ https://watami-organic.jp/blog/watami_organicland


【発酵パーク CAMOCY】
 麹を発酵させ、酒や醤油をつくる際の「醸す」という言葉が由来となっているCAMOCY(カモシー)は、「発酵」をテーマとした飲食店や販売店が入る複合施設です。ここでは、株式会社醸(かもす)の阿部店長からCAMOCYの成り立ちとコンセプト、今後の展望についてお話をいただきました。事前学習で施設についてはひととおり学んでいましたが、次から次へと出てくる未来の構想のお話に驚嘆。阿部社長の「もはや復興のステージではない」という言葉の重みを感じました。

(参考)発酵パークCAMOCYホームページ https://camocy.jp/



<<旅の振り返り~振り返りミーティングの開催~>>

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以上、3つの地域のツアー終了後には、参加者の皆さんに久慈市・宮古市・陸前高田市にある若者カフェの連携拠点等に集まっていただき、振り返りミーティングを開催しました。

 振り返りミーティングでは、それぞれのエリアの参加者からツアーの感想やご意見をお話いただきました。また、ゲストスピーカーとして(株)JTB総合研究所主席研究員吉口克利さんをお招きし、「人的交流(若者×地域)による地域の活性化」をテーマに、富士山麓で現地の方々と交流するマウンテンバイクエコツアーや札幌で人気となっているガストロノミーツーリズムといった事例も交えながら関係人口・交流人口創出につながるお話をいただきました。

 当日の感想や事後に行った参加者アンケートの中でも、
・魅力的な沿岸部の方々との交流ができ、一人で普通に旅行するだけでは感じられなかったであろう特別な地域の魅力を感じられた
・震災を経験された地元の方の話を聞く中で、地元のために自分にできることを考えてとにかく行動するというその心が力強く印象に残った
・なかなか三陸沿岸へ行く機会がないので,内陸部の人間にとってはとても良いプログラムだと思った
 といった意見をいただき、実りある企画になったものと考えております。

  最後になりますが、今回の取組は地域の事業者の皆様、現地コーディネーターの方々のご協力なくては実現できませんでした。この場をお借りして深くお礼を申し上げます。

 今後も三陸沿岸地域の活性化に繋がるよう、官民連携で取組を推進してまいります。

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