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特集記事

みちのくみっけ Vol.1 南三陸編 2日目

(掲載日:平成29年01月06日 )

(1日目はこちら)

< 2日目 >

南三陸の復興の原点!『福興市』で朝ごはん


仮設魚市場で開かれている「福興市」
南三陸2日目の朝食は、仮設魚市場で開かれている「福興市」でとることにしました。毎月第4日曜日に開かれているイベントで、「牡蠣・わかめまつり」「銀ざけ・ほやまつり」「タコまつり」など、旬のものをテーマに設定しています。
 
11月は「鮭いくらまつり」。漁協のお母さんたちがつくるあったかい鮭汁が振る舞われていました。 

鮭汁は一杯100円、タコ飯は200円
鮭汁は一杯100円、タコ飯は200円。300円でこんな幸せな気分が味わえるなんて! 産地価格ってすごいですね。新鮮な海産物や南三陸の特産品もずらりと並んでいて、何を買って帰ろうかと迷ってしまいます。
 
新鮮な海産物や南三陸の特産品
新鮮な海産物や南三陸の特産品
新鮮な海産物や南三陸の特産品
新鮮な海産物や南三陸の特産品
この『福興市』、実はさんさん商店街の前身とも言える市なのだそう。実行委員長の山内正文さんにお話を聞きました。

実行委員長の山内正文さん
飛田 『福興市』はどんな経緯で始まったのですか?  

山内さん 南三陸では『ぼうさい朝市ネットワーク』という全国組織に加入していまして、何か災害があったときに助け合うことになっていたんですよ。実際、震災から10日後には事務局長が視察に来てくれてね。「テント市から再出発したい」とこちらの展望を伝えたところ、力を貸してくれました。第一回『福興市』は、2011年4月29日・30日に開催したんですよ。

飛田 まだ震災から一ヶ月半の頃だったんですね。

山内さん 当然売るものなんてないでしょう。全国の商店主たちに商品を送ってもらい、それを販売させてもらいました。これが本当にお客さんに喜ばれてねぇ。震災後初めての買い物になった人も多かったんじゃないかな。たくさんの人が集まったから、安否確認の場にもなったんですよ。あちこちで「あなた無事だったの」「いまどこにいるの」と話している人がいて……あの光景はいまだに忘れられません。

福興市
福興市
飛田 今日も多くの人で賑わっていますね。

山内さん 来場者数は毎回1万人前後です。続けていくうちに売上も少しずつ上がっていってね、それが地元商店主たちの「もう一度お店をやろう」という気持ちを後押ししたんですよ。

飛田 『福興市』は南三陸の復興の原点とも言える市なのですね。

山内さん 12月は正月用の食材を浜値で販売する『おすばでまつり福興市』を開きます。カニ、タコ、ホタテ、アワビ、イクラと新鮮な海産物も超特価で売り出すので、毎年長い行列ができるんですよ。1日で1200万円を売り上げる位ですから。『おすばでまつり』は震災前から続く南三陸の風物詩なので、ぜひ遊びにきてほしいですね。
 

南三陸防災対策庁舎跡地で献花

防災庁舎跡地の献花台
福興市のあと、防災庁舎跡地の献花台に立ち寄り手を合わせました。色とりどりの花や折り鶴が備えられたお地蔵様の向こうに、津波で流され骨組みだけとなった防災庁舎の残骸が佇んでいます。ここでは、町職員ら43名の方が犠牲になりました。
 
安藤さん 防災庁舎の周囲は、震災復興祈念公園となることが決まっていて、現在整備中です。2015年に県が「震災から20年後の2031年まで県有化する」と発表したため一時保存することになりました。震災遺構として残すか、解体するか。それを決める猶予ができたということですね。

「見るのが辛い、取り壊してほしい」と願う人がいる一方で、「震災を語り継ぐために残すべきだ」という考える人も。防災庁舎の今後については、町内でも意見が分かれているといいます。

南三陸南部のドライブスポット・黒崎で海を眺める


志津川湾を一望できるパーキングスポット
次の目的地・『カフェちょこっと』へ行く途中で、安藤さんが車を止めてくれました。ここは黒崎と言って、志津川湾を一望できるパーキングスポットです。この日は湖と錯覚してしまうほど波が穏やかで、水面は空の色や雲の動きを反映しながらゆらゆらとさざめいていました。11メートルの大津波が町を襲ったなんて想像できません。
 
「震災直後は海が憎らしくて堪らなかったけど、やっぱり海を見ていると心が落ち着くし、海のそばから離れられない」。ーー取材の中で聞いた言葉ですが、こうして被災地の海を眺めていると、その気持ちが少しだけわかる気がします。
 

魅力はお母さんの明るい笑顔とおいしい家庭料理。『カフェちょこっと』でお昼ごはん

 
魅力はお母さんの明るい笑顔とおいしい家庭料理。『カフェちょこっと』でお昼ごはん
©2015 Hiraku Watanabe
黒崎から海岸沿いに車を数分走らせると、『カフェちょこっと』に到着です。扉を開けると、けやきのカウンター越しに、店主の成澤英子さんが「いらっしゃい」と明るい笑顔を向けてくれました。温もりある木造の建物で、気持ちが安らぎます。
 
成澤さん この店はね、義理の息子がやっている『南三陸木の家づくり互助会』に工事をサポートしてもらったんですよ。地域の森林資源を活用して会員間の互助で家をつくろうという会です。南三陸は工事・建設ラッシュで、大工さんを見つけるのが大変なの。板倉構法ならすぐに建てられると聞いて、お願いしました。
 
花が咲いたような明るい笑顔で対応してくれた成澤さん花が咲いたような明るい笑顔で対応してくれた成澤さん
飛田 震災前からお店を開いていたんですか?

成澤さん いえ、私は和裁の仕事をしていたんですよ。でも、震災後にボランティアに来てくれた人たちにごはんを振る舞っていたら、みんな「美味しい、美味しい」って食べてくれて。「それじゃこれを仕事にしようか」と思ってお店を始めました。特別なものはつくれないけど、旬の素材を使った家庭料理を提供しています。
 

お肉のランチ
お魚のランチ
ランチはお魚を使ったものとお肉を使ったものの2種類を出しているそう。一皿一皿丁寧につくっていることがわかる、ほっとする味でした。

カウンターに座ると、成澤さんやほかのお客さんたちとの会話が弾んでお店を離れがたくなってしまいます
©2015 Hiraku Watanabe
 
カウンターに座ると、成澤さんやほかのお客さんたちとの会話が弾んでお店を離れがたくなってしまいます。「うちは長居歓迎のお店だからゆっくりしていってね。今日来ているお客さんなんて、もう2時間以上いるんじゃないかしら」と笑う成澤さん。「地元の人とお喋りしたい」という気分のとき、ぜひ訪れてほしいお店です。
 

神棚飾りの『きりこ』をつくり、見えないものを尊ぶこころを知る


上山八幡宮 ©上山八幡宮

おなかが満たされた後は、上山八幡宮で『きりこ』をつくるワークショップに参加しました。きりことは、宮司が氏子のためにつくる、縁起物の絵柄を切り抜いた白い和紙のこと。神棚に飾り、毎年お正月に新しいものへと入れ替えます。東北沿岸部に伝わる風習ですが、ほかの地域では廃れてしまったところもある様子。南三陸では、親から子へ脈々と受け継がれてきました。
 
上山八幡宮で『きりこ』をつくるワークショップ ©上山八幡宮

このワークショップでは、3枚の絵柄の中から好きなものを選んで切り抜く体験ができます。禰宜の工藤真弓さんは、体験中にこんな話をしてくれました。
 
工藤さん 南三陸は、見えないものを尊び、祈りを大事にしてきた土地です。きりこが神棚でゆらゆらと揺れる姿や繊細な影絵に神様の存在を感じてきました。今日つくったきりこを家に飾り、南三陸のことを思い出していただけると嬉しいです。
 
上山八幡宮で『きりこ』をつくるワークショップ ©上山八幡宮

『伊里前福幸商店街』で晩酌のお供を購入


伊里前福幸商店街
伊里前福幸商店街
さて、旅もそろそろ終わりに近づいてきました。くりこま高原にはお弁当屋さんがないので、新幹線の中で食べるものはいまのうちに購入しておきましょう。南三陸北部の歌津地区、“日本一海に近い商店街”と呼ばれる『伊里前福幸商店街』にやってきました。
 
安藤さんおすすめの『マルアラ及川商店』には、美味しそうな瓶詰めやお惣菜、お弁当がずらりと並んでいました。選んだのは『伊達の銀糀漬け(いくら入り)』。冷凍されていますが、新幹線に乗る頃にはちょうど良くなっているはず。車中の楽しみができました。
 

海を眺めながら旅を振り返る。『カフェかなっぺ』でほっと一息


小高い丘の上に建つ『カフェかなっぺ』

最後の目的地は、馬場中山の港近く、小高い丘の上に建つ『カフェかなっぺ』。海を見下ろすトレーラーハウスカフェです。

理人の千葉嘉苗さん(左)と代表の千葉馨さん(右) 料理人の千葉嘉苗さん(左)と代表の千葉馨さん(右)
元野良猫のドンくん。現在は千葉さん夫婦に可愛がられています 元野良猫のドンくん。現在は千葉さん夫婦に保護されています

訪問したとき、店主の千葉さんご夫婦は外のウッドデッキで海を眺めながらお茶をしていました。嘉苗さんは震災後にボランティアの調理師として南三陸を訪れ、海辺の景色が気に入ったといいます。震災支援の窓口をしていた馨さんと知り合い、結婚して一緒にお店を始めました。
 
全部で10席ほどの小ぢんまりとした店内 全部で10席ほどの小ぢんまりとした店内
 
ティラミスは妙な甘さがなくちょうど良いほろ苦さでした
ティラミスは妙な甘さがなくちょうど良いほろ苦さでした

料理やお菓子は、地域でとれる旬の食材を使い、化学調味料をほとんど使わず1からつくっています。そのため、注文したものが出てくるまでに少し時間がかかることも。「時間に余裕があるときに来て、海を見ながらのんびり待っていてほしい」と嘉苗さん。
 
嘉苗さん 日々の忙しさに疲れている人、添加物や町中の大きな音・光といった刺激に敏感な人にぜひ来ていただきたいです。窓際の席に座って、何時間もぼうっと波の動きや空の変化を見ている方もいらっしゃいますね。少しでも心身を癒してもらえたら、と思っています。

旅の最後に立ち寄るのにぴったりの場所
お話をしている内に、空も海も刻々と表情を変えていきました。この2日間で見聞きしたことが思い出されます。旅の最後に立ち寄るのにぴったりの場所だな、と感じました。

南三陸から東京へ

 
飛田 2日間、とても楽しかったです。町の人がみなさん明るくて、いい笑顔をされていたのが印象的でした。
 
安藤さん 南三陸の人はとてもオープンだと思います。震災後、望むと望まざるとにかかわらず、多くの人が外から入ってきたわけですよね。この町の人は、それぞれ自分が出会った人をあたたかくもてなして、ファンにしてしまったんです。行政が旗ふりをしたわけでもなく、誰かカリスマ的なリーダーがいたわけでもなく、個人個人が自然とそう行動したところがすごいなと思います。

その結果、いまでも通いつづけている人もいるし、私も含めて数十人の若者が移住してきました。みんな、誰かとつながってこの町が好きになってやってきた人ばかりです。

飛田 南三陸の観光地としての魅力はどこにあると思いますか?
 
安藤さん やっぱり一番は、ここの人たちが持つもてなし力だと思います。震災前から観光交流に力を入れる中で身につけ、震災後に大勢のボランティアと接する中で磨かれてきたもてなし力。
 
一度も東北に来たことがない方の中には、「被災地ではみんな傷ついているから、気安く話しかけちゃいけないんじゃないか」と考えている方もいるかもしれません。でも、南三陸の人たちはとてもフレンドリー。被災地のイメージが変わると思います。むしろ元気をもらえるはず。ぜひ、南三陸に遊びに来て、町の人に話しかけてみてほしいです。
 
飛田 本当にそうですね。2日間、ありがとうございました!
 
安藤さん こちらこそありがとうございました。南三陸は四季折々で美しい町ですし、最近オープンした『南三陸 海のビジターセンター』で里山トレイルやカヌーといったアウトドアを楽しむのもおすすめです。ぜひまたいらしてくださいね!
安藤さん
いりやどで安藤さんと別れてくりこま高原に向かい、レンタカーを返して18時46分発のやまびこ54号で東京へ帰りました。2日間とは思えないほど、充実した旅でした。

旅を振り返って


防災庁舎
実は、当初の予定では防災庁舎を訪れる予定はありませんでした。
 
震災から6年が経とうとしているいま、いかにも被災地といった場所を紹介するよりも、震災と関係なく「南三陸って面白いところなんだな」と思ってもらえる場所を紹介するほうが大事なんじゃないか、と考えたからです。
 
けれども、1日目の夜。いりやどで阿部さんや新聞記者さんと「死を忌避して見ないようにしていたら、生の尊さもわからなくなる」「防災庁舎は奇跡の一本松のようにわかりやすい希望を感じられるものじゃないけど、あの場に立って何とも言えない気持ちを味わうことも大事なんじゃないか」といった話をする中で、考えが変わりました。
 
観光とは、「その土地の光を観ること」だといいます。今回出会ったみなさんが向けてくれた明るい笑顔や、「自分たちの手で町をつくっていこう」という意志は、この土地の光だと思いました。その光は、かつてこの町を襲った悲劇の重みや現在進行形のやりきれない気持ちをきちんと知ることで、より輝いて見えるに違いありません。

車中から見た黄昏時の志津川湾車中から見た黄昏時の志津川湾
 
南三陸は、訪れる人によって違った光を見せてくれることと思います。あなたの光を発見しに、南三陸を訪れてみませんか?

< 南三陸・1泊2日観光モデルプラン >

1日目

7:56東京駅発(はやぶさ101号)
9:59くりこま高原着、駅レンタカーを借りて南三陸へ 
(駅レンタカーの『レール&レンタカー』はJR乗車券が20%、特急料金が10%割引になるのでおすすめです)
11:00さんさん商店街を散策 
住所:南三陸町志津川字御前下59-1 
電話:0226-25-9880 
http://www.sansan-minamisanriku.com/shop-list/benkei/ 
※2017年3月3日に本設商店街へと移転予定。現在の場所での営業は2016年12月31日まで。
 弁慶鮨でお昼ごはん 
住所:南三陸町志津川字御前下59-1  南三陸さんさん商店街内
電話:0226-46-5141 
*海鮮丼:2,500円 
https://www.facebook.com/benkeisushi/
※2017年3月3日に本設商店街へと移転予定。現在の場所での営業は2016年12月31日まで。
 南三陸ポータルセンター/みなみな屋 
住所:南三陸町志津川字御前下51-1 
電話:090-7073-9563(みなみな屋)
   0226-47-2550(南三陸町観光協会) 
http://www.m-kankou.jp/minaminaya/
13:00ひころの里見学 
住所:南三陸町入谷字桜沢442 
電話:0226-46-4310 
*織物体験:1,500円 
*おばあちゃんとのお茶飲み:お茶菓子付き500円
http://www.k4.dion.ne.jp/%7Ehikoro/
15:00YES工房見学・まゆ細工体験 
http://ms-octopus.jp/project/introduce.html
住所:南三陸町入谷字中の町227 
電話:0226-46-5153
*まゆ細工体験中級:1,500円
16:00まなびの里いりやどにチェックイン 
住所:南三陸町入谷字鏡石5-3 
電話:0226-25-9501 
*アネックス宿泊費:7,500円

2日目

9:00福興市で朝ごはん 
住所:南三陸町志津川旭ヶ浦8 
https://www.facebook.com/fukkouichi/
※開催場所は回によって変わります
10:30防災庁舎で献花
11:00黒崎で海を眺める
11:30カフェちょこっとでお昼ごはん 
住所:南三陸町戸倉字底土53-4 
https://www.facebook.com/Chiyokoto/ 
*ランチ:800円〜
13:00上山八幡宮できりこ体験 
住所:南三陸町志津川字上の山26 
https://www.m-kankou.jp/tour/kiriko-program/ 
*体験料:1,500円(お菓子と椿茶付き)
15:30マルアラ及川商店(伊里前商店街)でお土産を購入 
住所:宮城県本吉郡南三陸町歌津字伊里前29-1
16:00カフェかなっぺでほっと一息 
住所:宮城県本吉郡南三陸町歌津字中山2-1 
電話:0226-25-7638 
http://www.chibakaoru.jp/canape/ 
*ティラミス&紅茶:700円
17:00南三陸出発
18:46くりこま高原駅発(やまびこ54号)
21:12東京駅発


今回の旅の費用

東京からの往復交通費(レンタカー代含):35,000円〜
宿泊費:7,500円
体験費:5,000円
飲食費:4,600円
お土産代:4,000円
合計:56,100円〜

※2016年12月時点の情報です。訪問する際は、現住所・定休日・営業時間をご確認ください。
(Vol.2 大槌編はこちら)
●写真・文
 飛田恵美子(ひだ・えみこ)
ライター 飛田恵美子
フリーランスライター。「ソーシャルデザイン」「コミュニティ」「新しい働き方」といった分野で記事を書いています。牡鹿半島でOCICAというアクセサリーを製作する「一般社団法人つむぎや」と一緒に、東北の復興ものづくりを紹介するウェブマガジン「東北マニュファクチュール・ストーリー」を運営。これまでに70以上の団体を紹介してきました。
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